語学留学をしようと思い始めて情報収集を始めると、インターネット上で「短期間の語学留学をしても意味がない」という意見を見かけることがあります。語学留学は語学力を向上させるためのプログラムであり、語学力向上の早道です。それなのに、なぜ意味がないといわれるのでしょうか。

せっかく留学をする決意をしたのに、その決意に水を差すような批判的な意見は聞きたくないものです。しかし逆に、そのような意見を受け止め、自分なりの考えを築いてみるきっかけにすることもできます。

批判的な意見に対して考察する機会をもつと、語学留学において注意すべき点が明確になるのではないでしょうか。そこで、これから「語学留学に意味がない」といわれる理由を整理していきます。その過程で、あなたの語学留学を成功に導くためのヒントを述べていきたいと思います。

語学力向上を目的とした留学が批判の対象になる理由

語学留学には意味がないという理由の中に「留学では語学以外のことを学ぶべきだから」というものがあります。言い換えると、海外留学は語学以外のことを学ぶ機会と捉え、語学力向上だけを目的とするべきではないという意見です。また、語学以外のことを学ぶ過程で語学力は必然的に向上するため、語学留学は不要であるということです。

極端な例として、野球選手が大リーグでプレイするためアメリカに渡ったり、サッカー選手がヨーロッパリーグに所属するためイタリアなどに行ったりすることが挙げられます。留学とは異なりますが、彼らは語学以外の目的で海外へ渡航しており、英語やイタリア語を学ぶためではありません。

留学生に関しても、日本より研究が進んでいる分野について海外の大学や大学院で学ぶ人たちが大勢います。彼らも渡航先の国の言語を習得するために海外留学をしているわけではありませんが、その国で学ぶ過程で言語も習得していきます。

確かに言語はスポーツや研究といった目的を遂行する際に使用するコミュニケーションの手段です。その手段を目的とするのは筋違いです。しかし、手段としての言語が使えないレベルにある場合はどうでしょうか。そのレベルで、いきなり言語以外のことを学ぼうとしても相手が何を話しているのか全く理解できません。また、自分の考えをきちんと説明することもできません。

そのような状態では、意思疎通のできない無意味な時間だけが過ぎてしまいます。その結果、参加しているプログラムの先生やほかの生徒の時間まで無駄にするため、プログラムの進行自体を阻む結果になりかねません。そのため、語学力が低い状態で語学以外のことを学ぼうとしても時間とお金の無駄になります。

したがって、留学では語学以外のことを学ぶべきだという考えは、語学力が一定レベルに達していることが前提条件になります。ただ、そのようなレベルに達している人たちは語学留学をする必要がありません。

また、先ほどのスポーツ選手の例のように専門性の高い分野で海外でも活躍できるスキルを持っている場合は、通訳を雇ったり、仕事をする過程で時間をかけて語学力を磨いたりすることができます。

しかし、そういった特殊なスキルを持っていない場合には、語学力を一定レベルにまで引き上げる必要があります。そのための効果的な手段の一つとして語学留学を選択しているわけです。

しかし、語学力が一定レベルに達していない人たちが語学留学を選択すること自体を批判する声もあります。その点をもう少し掘り下げてみましょう。

英語を学習する手段としての語学留学に対する批判

名前の通り、語学留学とは語学力を向上させるためのプログラムです。しかし、語学留学には意味がないという意見があり、その理由を整理してみると大きく以下の3つにわけることができます。

語学留学には意味がないという3つの理由

  1. 留学前と留学後で英語力はさほど変わらない
  2. 日本でも英語力は向上できるため、必要性がない
  3. 費やすお金や時間に対して、語学留学を通じて得られるものが少ない

それでは、これら3つの理由をそれぞれ考えてみましょう。

なぜ留学しても英語力は伸びないといわれるのか

意味がないといわれる1つ目の理由は、数週間から数ヵ月の短期間で語学留学をしても英語力は伸びないという意見に基づいています。なぜ、そのようなことがいわれるのでしょうか。

英語力の定義があいまい

それは、英語力が上がっていること自体が、留学した当人にも他人にもわからないからです。

ここでいう英語力とは広い意味の「英語を言語として使う力」です。客観的に計測できる指標がなければ、留学後に英語力が伸びたかどうか、またどれくらい伸びたかはわからないのです。

たとえば、「TOEICのような英語テストの点数」「特定のリスニング教材を聞き取り、書き出すことができた文字数」「3分間のスピーチを10人のネイティブに審査してもらった得点」などといった客観的数値であれば一目瞭然です。

しかも、これらの例で計測したとしても、それぞれ英語力の一つの側面だけを評価しています。つまり、TOEICの点数はTOEICで高得点をとるための英語力、リスニング教材の場合はリスニング力、そしてスピーチは表現力や発音などのスピーキング力です。これらは、留学中に習得した英語力を総合的に計測するものではありません。

また、個人の性格によっても語学留学で伸びる英語力には違いがあります。

外向的で積極的な性格の人は、間違いを恐れずに現地の人たちに話しかけ、授業中も積極的な発言をするため、スピーキングの力は伸びる可能性が高いでしょう。

一方で、内向的な性格の人は、物事をじっくりと観察しながら周囲の人たちが話していることをきちんと理解しようとするため、傾聴力やリスニング力が伸びている可能性があります。

傾聴力やリスニング力といったものは、表面的にあらわれにくいため、外向的な人の方が英語力は伸びているかのように見受けられがちです。しかし、内向的な人のリスニング力が劇的に伸びていたとしても、本人以外は誰も適切な評価をしていないかもしれません。もしくは本人さえも気づいていないかもしれません。

このように、英語力を評価すること自体が難しいため、短期留学をしても英語力が向上しないとは断言できません。

どれくらいの期間であれば英語が上達するのか

次に、「留学期間が短い」という部分に着目すると、どれくらいの留学期間であれば英語が上達するのかと逆に疑問が湧いてきます。

結論からいえば、人それぞれ異なります。なぜなら、留学開始までに英語の勉強を全くしてこなかった人と基礎力が身についている人では、英語力の伸び方は全く異なるからです。基礎知識が多ければ多いほど、留学の効果が見込めます。したがって、短期留学であっても、基礎がしっかりしている場合には効果があります。

また、長期で語学留学をしているからといって、必ずしも効果がでるわけではありません。それは、期間が長ければ自然と語学が身につくはずだと甘えが出て、勉強しない場合があるからです。それよりも、目的や目標を明確にして短期で集中して語学を習得しようとする人の方が効果的な場合もあります。

以上のように、留学前までの英語力や個人の目的意識などが影響するため、効果的な語学留学の期間を一概に述べることはできません。

英語力が伸びなかった原因はほかにある

短期の語学留学で英語力が伸びなかった原因は、期間の長さ以外でも考えられます。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

語学留学で英語力が伸びなかった原因

・授業以外では日本語ばかり話していた

・宿題などに真面目に取り組まなかった

・授業中以外はまったく勉強しなかった

・ほかの日本人と一緒に遊ぶばかりしていた

・友達になった日本人の中に英語ができる人がいたため、英語を使う場面が少なかった

・ホームステイ先で異文化になじめず、部屋に閉じこもってしまった

上記の原因を見てみると、重要なポイントが浮かび上がってきます。それは、いかにして日本語を話せない状況を作り、英語を使わざるを得ない環境に身を置けるかということです。

日本でも英語力は向上できるため、必要性がない

では、語学留学には意味がないという2つ目の理由について考えてみましょう。

2つ目の理由は、英語の勉強は日本でもできるため、留学する必要がないというものです。確かに、わざわざ英語圏に留学しなくても英語の勉強をすることは可能です。実際に、留学経験が一度もないのにネイティブのような英語を話し、一定レベル以上の英語力を国内で習得した人たちも大勢います。

しかし、日本で高い英語力を培った人たちの多くは、それなりの時間や教材費を英語学習に投資してきたはずです。語学留学に投資して、英語学習をすることと何が違うのでしょうか。英語を学習するための手段はいくつもあり、それらの選択肢の中から自分に最適と思われる手段を選んでいるだけです。

したがって、必要性があるかないかは英語を学習する本人が判断することです。

逆に、語学留学せず、日本だけで英語を学習することが果たして効果的・効率的だといえるでしょうか。仮に、日本で週に2回50分の英語の授業を受けたとします。合計すると1ヵ月8回のレッスンで、合計400分です。

では語学留学をしている場合はどうでしょうか。単純に語学留学のレッスン時間が週に25時間だったとすれば、1ヵ月の合計は100時間です。分に換算すると、合計6,000分になります。

つまり、レッスン時間だけの比較では、日本で学習すると400分、語学留学すると6,000分です。語学留学では、1ヵ月で15倍の時間を英語に費やすことになります。しかも授業以外の時間も英語を使わざるを得ない環境にいるため、語学留学中に英語を使う時間はさらに多いです。

さらに語学留学中には、日本語という言語回路を使うことなく、英語だけで生活をすることができます。留学生活が始まって1週間もすると英語で夢をみたり、無意識で英語の独り言をいうようになったりします。このような状況を日本にいながらにして作り出すのは不可能といってもいいでしょう。

以上の点にも、語学留学を成功させるためのヒントがあります。それは、自分ひとりで過ごす時間でも、日本語を全く使わない環境を作り出すことです。英語を使わざるを得ない状況を増やすことは当然ですが、日本語に全く触れない状況は留学中でなければ作り出せません。

費やすお金や時間に対して、語学留学を通じて得られるものが少ない

語学留学には意味がないという3つ目の理由は、語学留学の費用対効果が低いということです。

語学留学と英語スクールの費用を比較

まず費用に関して考えてみましょう。語学留学では日本で英語のレッスンを受ける場合と比較すると、1ヵ月で15倍のレッスン時間を確保できると先ほど述べました。一般的な英語のグループレッスン料は月に8回で2万円程度ですから、留学がその15倍であるとすればレッスン時間だけで計算すると1ヵ月30万円です。

語学留学の一般的な費用は、国や学校によって差がありますが、1ヵ月で30~50万円くらいです。この費用には大抵の場合、授業料だけでなく、ホームステイや寮などの滞在費が含まれています。

プログラムの内容、滞在費、そして完全な英語漬けの生活が送れることを考えると妥当な金額だといえます。また、2ヵ月になると50~80万円、3ヵ月の場合は70~110万円と期間が長くなるほど1ヵ月あたりの費用は安くなります。

参考までに比較をしてみましたが、語学留学という特別な機会を日本の英語スクールに通った場合と単純に金額だけで比較することは無意味といってもいいでしょう。それはまるで、美容整形手術と美容コスメを費用だけで比較しているようなものだからです。

語学留学を通じて得られる異文化体験や外国の友人

次に語学留学を通じて得られることの中には、英語学習のほかにも異文化体験や他国から来ている学生との交流などがあります。このような経験は日本にいてもできるという意見もありますが、果たしてそうでしょうか。

外国の人たちと同じ学校に通い、グループで一緒の課題に取り組むようなことは日本ではあまり経験できません。しかも、絶対に日本では出会えないような国の人たちとの交流もあります。

(これは、アメリカの語学研修で一緒だったクラスメイトと中華料理店に行った時の写真です。左から、エジプト出身のバジー、クリス先生、私、韓国出身のピョンヨン、アラブ首長国連邦(UAE)のサイード、そしてジョアン先生)

たとえば、私の通っていた大学にはアラブ系の学生が50%以上も語学研修コースに通っていました。彼らとの日常会話の中でラクダの乗り方やバクラバという甘いお菓子の作り方の話をしたことは、いまでも鮮明に覚えています。

生活者としての日常体験

また、授業以外の場面では、現地のレストランでサラダのドレッシングが10種類以上あるため、ウェイトレスに何度も繰り返して言ってもらったり、スーパーのレジがベルトコンベア式になっている様子を実際に体験したり、さまざまな経験をすることができます。

もちろん旅行でもこういった経験はできますが、旅行者と生活者では行動パターンが異なります。

たとえば、旅行ではひとつの都市に滞在する期間が短いため、恐怖心から地下鉄に乗ることがなかったとしましょう。しかし、その都市で生活するようになると現地の人たちと同様に地下鉄を利用することが当たり前になります。

また、スーパーに毎日通っているとお店の人に顔を覚えられて、簡単な挨拶をかわすことができるようになることもあるでしょう。そういった現地での小さな進歩が思い出となり、貴重な留学経験を形成していきます。

就職・転職に生かすために

費用対効果が低いという意見の中には、留学に対する一般的な評価が低いことを指摘する人もいます。具体的には、就職や転職の際に、留学経験があることに対して「どうせ遊んできただけでしょ」という反応しかないということです。

本当に遊んできただけなのであれば、留学経験を就職に生かすことはできないでしょう。また、留学経験者も増えているため、就職・転職時の面接官も留学の話を聞いても珍しくないはずです。

面接官の立場から考えれば、その留学経験をもっているあなたが、その会社にどれだけ貢献できるかを知りたいわけです。そのため、留学経験を通じて学んだスキルや留学時に発揮されたあなたの性質を、その会社で必要とされることと照らし合わせて話をすれば留学経験を就職・転職に生かすことは可能です。

もし留学する前に就職・転職したい会社が決まっているのであれば、その会社にとって最も魅力的に思える留学経験というものは何かを想像し、逆算して行動してみればいいのです。

以上のように、語学留学には意味がないという3つの理由を考えてみました。基本的には、語学留学を通じて英語力を劇的に向上できれば、意味がないといわれることはありません。

それでは上記の内容をふまえて、語学留学を成功に導くための考え方や行動をまとめてみましょう。

語学留学を成功に導くための考え方や行動

短期間の語学留学活用して、英語力を最大限に伸ばすためにはどのように考えて行動すればよいでしょうか。これまで述べてきた内容から、以下のポイントが挙げられます。

考え方と行動

・留学前から英語の基礎力をつけておく

・短期間だからこそ、目的や目標を明確にし、集中して英語学習に取り組む

・英語を使わざるを得ない環境に身を置く

・日本語に全く触れない状況を作る(同じプログラムに参加する日本人が少ない方が実践しやすい)

・積極的に外国の友だちを作る

・得たい結果から逆算して行動につなげる(就職・転職で面接官と話している状況を想像する)

ここで一つだけ補足したいことがあります。

これまで私は日本人が少ないプログラムを選択することを推奨してきました。それは、毎日ずっと英語を話し続けることがつらくなったときでも、まわりに日本人がいなければ日本語を話すことができないからです。

しかし日本人の参加人数に関わらず、留学中には日本語を使わないという強固な意志をもつことが重要です。敢えてこの点を強調したいのは、語学留学で思うような成果がでなかったことを、他人やまわりのせいにしないで欲しいからです。

留学で一番大切で必要な考え方として、主体性があります。何をしていても至れり尽くせりのサービスを受けられる日本とは異なり、海外では自分で何でもする姿勢が大切です。受け身で他人任せにするのではなく、自分の行動に責任をもち、主体的に動くことが必要です。

以上のように「語学留学に意味がない」といわれる理由をもとに、短期の語学留学を成功させるための考え方や行動について述べてきました。短期間であっても有意義で特別な留学経験にするために、これらの考え方を参考に行動に移していきましょう。