英語圏での留学を成功に導くために必要なこととして、英語力を身に付けることがあります。渡航する前も、現地に着いた後も、英語力を伸ばすことの必要性を感じている人は多いはずです。

では英語力の基本となるものは、なんでしょうか。それは語彙です。語彙を増やすことは、英語力を伸ばすために不可欠です。学生であっても社会人であっても海外留学の際には、語彙は多いほうが有利です。

ここで紹介する英単語の覚え方を活用すれば、記憶に定着する本物の語彙が身に付きます。一夜漬けの記憶方法ではなく、実践で使える語彙の増やし方です。それでは、具体的に説明していきます。

英単語を覚える2つのメソッド

英語学習者が英単語を覚える方法にはさまざまなものがあります。それらは大きく2種類に大別できます。

「単語集メソッド」

1つ目は、英語学習の目的によって編さんされた頻出単語を集めたものを丸暗記する方法です。いわゆる単語集を使って覚えていく方法です。ここでは「単語集メソッド」と呼びます。

「出現単語メソッド」

もう1つの方法は、英語を読んだり聞いたりする際に出てくる単語を覚えていくやり方です。出現する英単語を覚えていくということから、ここでは「出現単語メソッド」と呼びます。

いずれの方法もメリットとデメリットがあります。それらは以下の通りです。

「単語集メソッド」のメリットとデメリット

単語集を用いて英単語を記憶していく方法のメリットは、非常に効率が良いことです。単語集は、学習者の目的によって頻出する英単語を網羅しています。また掲載されている単語には、例文や音声がついているため、単語集と付録CD(またはダウンロード可能な音声ファイル)以外のものを参照する必要がありません。

この方法のデメリットとしては、掲載されている単語に複数の意味がある場合には、それらのうち1つか多くても2つしか掲載されていないことです。また大抵の場合、例文も1文しか掲載されていません。そのため、別の文脈では異なる意味をもつ単語の意味を知ることができません。

例えば、「outstanding」という英単語には、3つの意味があります。

outstanding

1.「傑出した」「実にすぐれた」

2.「突き出た」

3.「(負債など)未払いの」「(問題など)未解決の」

研究社 「新英和中辞典」より

ところが、以下のページにあるように単語集では、「実にすぐれた、傑出した」という1つ目の意味しか掲載されていません。

松本茂監修 「速読速聴・英単語 Core 1800 ver.2」 324ページより

以上の例のように単語集には、すべての意味が掲載されていない単語が存在します。

さらに英単語を丸暗記する行為は単調であるため、継続することが難しいということもデメリットとして挙げることができます。

「出現単語メソッド」のメリットとデメリット

さまざまな英語の文章を読んだり聞いたりしていると、知らない単語が出現します。そのとき、英語学習者は大抵の場合、知らない単語に下線を引きます。その後、辞書を引いてその単語の意味を書き込んだり、単語帳を作ったりして覚えていきます。

また英語を聞いているときに知らない単語が出てきた場合は、どうでしょうか。聞いた音から、その単語のつづりを推測して辞書で確認するか、その単語を使ったした人に質問して意味を理解し、覚えていくのではないでしょうか。

このように日常生活の中では、知らない英単語が出現します。そういった単語が出現するごとに記憶していく方法を、先ほど「出現単語メソッド」と名付けました。

この方法のメリットは、単語の意味を文脈の中で捉えることができる点です。ある単語が生活の中で自然に出現した状況を把握しながら覚えることができます。

また、辞書を引くという経験そのものがその単語と結びつくため、記憶しやすくなります。

さらに、丸暗記をする「単語集メソッド」と比較すると、「出現単語メソッド」は単調な作業ではありません。読んでいる文章や聞いている英語の内容を把握する目的があるため、単語の意味を知る直接的な動機になります。

この方法のデメリットとしては、手間や時間がかかることです。先ほど描写したように、知らない単語が出現した本や場面から一旦離れて、その単語を辞書で引く必要があります。また、自分で単語帳を作成している人の場合には、辞書で調べた単語を単語帳に転記する手間もかかります。

また、英語を習得する目的がはっきりしている場合は、この方法は非効率といえます。なぜなら、日常生活において英単語はランダムに出現します。そのため、習得目的では、あまり使う機会のない単語も出現するからです。

例えば、TOEFLテストで高得点を取得することが目的だとしましょう。しかし、さまざまな種類の英語に触れる機会が増えた今日では、出現する英単語の中にはTOEFLでは全く扱わないものがあります。それらすべてを辞書で調べ、記憶することに時間を費やすよりも、TOEFLの単語集を主に記憶したほうが効率は良いです。

ここまでは、英単語を覚える2種類の方法について述べてきました。では、どちらの方法で知らない単語を覚えていけば良いのでしょうか。以降では、英語学習者の語彙レベルに対応した「語彙増強の2段階アプローチ」を提案します。

語彙増強の2段階アプローチとは

同じように英語を学習していても、語彙力は人によってさまざまです。そのため、英語学習者の語彙レベルをレベル1とレベル2の2つに分け、レベルごとに前述の2つの手法(「単語集メソッド」と「出現単語メソッド」)を活用する「2段階アプローチ」を提案します。

「受容語彙」と「発表語彙」

レベル1とレベル2の説明に入る前に、語彙のカテゴリーについて少しだけ説明します。

「ある単語を知っている」といった場合の「知っている」という言葉には複数の意味があります。具体的には、「その単語を見たり、聞いたりしたことがある」「その単語の意味を日本語で知っている」「その単語をどのような文脈で使うべきかといった用法まで知っている」などです。

このように「知っている」という言葉がさまざまな状態を表すため、わかりやすく4つの状態に分類してみましょう。そうすると以下の通りになります。

「単語を知る」という4つの状態

状態1:その単語を全く知らず、見たこともない

状態2:その単語を見たり聞いたりしたことはあるが、明確な意味を把握していない

状態3:その単語を読んだり聞いたりしたときには理解できるが、自分が書いたり話したりするときに使うことは難しい

状態4:その単語を明確に理解しており、自分が書いたり話したりする際にも問題なく使うことができる

状態3にある単語のことを、研究者の間では「受容語彙(receptive words)」といい、状態4の単語のことを、「発表語彙(productive words)」といいます。

以上のことを踏まえて、2段階アプローチの「レベル1」と「レベル2」の説明に移ります。

レベル1とは

意味を知っている英単語の総数が3,000~5,000語に満たない場合、「レベル1」と分類します。自分の知っている単語数がわからない場合は、実用英語技能検定(英検)2級もしくはTOEICで550点を取得しているかどうかを基準とします。

どちらの試験も受けたことがない場合は、市販されている英検2級の英単語集を閲覧し、意味をすぐに答えられる単語が90%以上ない場合は、レベル1だと考えてください。

レベル1では、効率的に最低限の英単語を覚える必要があるため、「単語集メソッド」を用います。レベル1の目標は、読んだり聞いたりしたときに意味がわかる「状態3」の単語を3,000~5,000語レベルまで増やすことです。

このレベルまで達していないと、留学をしてもわからない単語が多すぎてコミュニケーションがとれない可能性が高いからです。

レベル2とは

「レベル2」とは、受容語彙が3,000~5,000語ある段階のことを指します。

自分の知っている語彙数がわからない場合は、先ほどと同様に市販の英検2級の単語集を閲覧してみましょう。意味がわからない単語が20%以上ある場合は、復習も兼ねてレベル1から実践してください。

レベル2では、基礎的な単語は理解できるため、基本的には「出現単語メソッド」を使います。

ただし、語学留学ではなく、海外の大学へ直接留学するには、8,000~10,000語の語彙を培う必要があります。語学留学では、英語を母国語としない生徒のための授業ですが、大学留学ではネイティブと同じ授業を受けます。つまり、英語ができることが前提なのです。

その場合、効率的に語彙を増やすには、まず「単語集メソッド」を集中的に行ってください。またリーディングやリスニングの勉強などで出現する英単語については「出現単語メソッド」を用いて覚えていくと良いでしょう。

レベル2では、「受容語彙(receptive words)」を増やすことに加えて、自分が話したり書いたりするときにも使える「発表語彙(productive words)」も増やすように心がけましょう。

具体的には、話したり書いたりする際に新しく覚えた単語を積極的に活用することが大切です。その単語を使った例文を最低3つは書いてみましょう。また留学中であれば、覚えたばかりの単語を日常会話の中で使うように心がけてください。

例えば、「abandon(~を捨てる)」という単語を新しく覚えたときには、以下のような例文が考えられます。

My friend abandoned me to hang out with other friends.(私の友達は、別の友人と遊ぶために私を見捨てた)

例文が思いつかない場合は、「abandon 例文」でインターネットを検索すると数多くの例文が出てきます。それらの例文を見るだけでも、どのような文脈で使われるのかをイメージできます。

覚えたばかりの単語を日常生活で使う例として、留学中のエピソードをお話します。

私が留学一年目に知り合ったアメリカ人の学生の中に、ジェニファーというパンク系の女性がいました。

彼女は、髪の毛をピンクや紫といった派手な色で染めていました。耳や鼻にピアスをしているのは当然ですが、舌やおへそにもピアスをしていました。

ある朝、カフェテリアに行く途中で出会った彼女の手に、英単語が一つ書いてありました。

「Jennifer, what’s that on your hand?(ジェニファー、手に書いてあるものは何?)」と聞くと、彼女の風貌からは想像できない言葉が返ってきました。

「I am doing this to expand my vocabulary.(こうやって語彙を増やしているのよ)」と言ったのです。つまり、彼女は知らない単語を毎朝一語、手に書いておきます。そして私がしたような質問を受けたり、その単語が自分の目に入ったりするたびに、その単語の意味を説明し、文章の中で使っているというのです。

ネイティブであっても(パンク系であっても)、そのようにして「受容語彙」を増やすだけにとどまらず、「発表語彙」を増やす努力をしています。語彙を増やすことは、自分の考えを的確に表現する力になります。レベル2の状態で満足することなく、語彙をさらに増やしていくとネイティブに負けない表現力を身に付けることができるでしょう。

以上で、2つのレベルとそれぞれに対応したメソッドについて述べました。

ここからは、具体的なメソッドの解説に入ります。ただ、レベル2で活用する「出現単語メソッド」については、特筆すべき詳細なポイントは特にありません。なぜならこのメソッドは、知らない単語に遭遇したときにその意味を類推し、辞書を引くという単純な手法だからです。

したがって、以降ではレベル1で活用する「単語集メソッド」に焦点を当てて解説します。

「単語集メソッド」で単語を覚える方法

それでは、「単語集メソッド」でどのようにして語彙を増やしていくかを解説していきます。

単語集を選ぶ際の注意点

まず単語集を選ぶ際の注意点を説明します。「単語集を使う」といっても、多種多様なものがあります。どのような基準で選べばよいのでしょうか。

・単語集は必ず音声が付いているものを選ぶ

単語集に絶対必要な条件は、その単語集に音声のCDやデータが付属していることです。

もしCDが表紙や裏表紙の裏側についていない場合は、表紙や前書きの部分に「音声ダウンロード」といった文字がないかを確認してください。そういった文字があれば、音声ファイルをインターネットからダウンロードしてパソコンやスマホに保存することができます。

CDやダウンロード可能な音声がない場合は、その単語集は購入しないでください。発音記号を正確に読める場合は別として、新しい単語がどのように聞こえるかを知らないと音を単語として認識できないからです。

例えば、音声で「ハイエラキー」と聞いたときに、これが「hierarchy(ヒエラルキー、階級)」であると認識するためには、「hierarchy」という単語がどのように発音されるのかを知る必要があります。

「hierarchy」という文字を見て、意味がわかるだけではリスニングの際に役に立ちません。

したがって、単語集は必ず音声がついているものを購入しましょう。

・単語集の種類は英検用のものを選ぶ

次に、単語集の種類です。単語集は、「大学入試」「TOEIC」「TOEFL」「英検の級ごと」「話題別」「語源別」「中高6年分の英単語」「英会話」といった多種多様な目的別に編さんされています。

しかし、「語学留学」を目的とした英単語集は、レベルが人それぞれ違うため編さんすること自体が困難です。そこで、何十冊もの英単語集を調査した結果、私がお勧めするのは英検2級対策用の単語集です。

その理由は次の通りです。

大学入試のものは、大学の難易度によりレベルが異なります。また、実践で使う単語以外のものが数多く収録されているため、無駄が多くなります。

TOEFL対策のものは、大学で学ぶために必要な語彙を習得することが目的のため、8,000~10,000語レベルに設定してあり、アカデミック(学術的)な単語が多く含まれます。

英会話用のものは、扱う幅が広すぎるため、何を選べばよいのかわかりにくいです。留学やホームステイ用の単語集を活用することも考えられますが、難易度が低すぎるものが多いのが実情です。

また、語源別などの単語集は、言語を学習すること自体が好きな上級者向けの教材です。

以上のことから、英語学習者のレベルが明確に設定されている英検の単語集が最適であると考えます。特に語学留学を目指すレベルの方は、高校卒業レベルに設定された英検2級の単語集をお勧めします。

なお、語学留学をする方の中でも、語彙レベルは人によって異なります。そのため、英検2級の単語集に記載されている単語が90%以上わかる場合には、英検準1級の単語集を試してみてください。

もし英検準1級でも物足りないようであれば、すでにレベル2の段階にあります。現段階で語彙力を高めることに注力する理由がない場合には、英語での4技能(読む・聞く・書く・話す)を使う機会を増やし、その過程で語彙を自然と増やしていけば良いでしょう。

また、短大や大学留学のために、TOEFLで高得点をとる必要がある場合は、英検2級ではなく、TOEFLの単語集を選択するほうが実践的です。

社会人の方が実践的な単語に集中したい場合は、TOEICの単語集を使ってビジネスに関する語彙を増やすと良いです。

もう一度整理すると、以下のようになります。

目的に合った単語集の選び方:

語学留学をしたい・している人: 英検2級の単語集

語学留学をしたい・している人で英検2級の単語集が簡単に思える人: 英検準1級

短大・大学留学のためにTOEFLで高得点が必要な人: TOEFLの単語集

実践的なビジネスの語彙を増やしたい社会人: TOEICの単語集

基本的には、英検2級の単語集をマスターすることを心がけてください。それが簡単すぎる場合には、すでにある程度の語彙力があるため、英検準1級やその他の単語集を使ってください。もしくは、語彙増強以外の英語力を伸ばすことに注力しても良いでしょう。

単語集の使い方

ここからは、選んだ単語集の使い方を説明します。

単語集を使って語彙力を伸ばす人たちの特徴は、単語集を何回も繰り返し学習しているのです。このことは、脳科学の研究においても実証されています。つまり、記憶には復習することが重要なのです。

エビングハウスの忘却曲線

ここでドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの研究を紹介します。1880年代に行った彼の研究は、復習の重要性を説くもとになったものです。

まずエビングハウスは、被験者にとって全く新しいものを記憶させる必要があったため、NEXやLAZのような意味をもたない単語を2,300個も作り上げました。

次に、その中から無作為に7~36個の単語を使って、さまざまな長さの単語リストを作りました。

例えば、「NEX LAZ WID ZOF GEB ZUJ WUB QOV」などです。

それから、彼自らが被験者となり、1分間に150個の速さで音読しながら、このような単語リストを記憶していきました。

その過程で、「記憶の定着率」と「時間」の関係が次のような反比例の曲線になることを証明しました。

この研究によると、新しく記憶した内容を1時間後には50%以上、1日後には約7割も忘れるということです。

また、この研究でエビングハウスは、反復することで「記憶をより長く定着させることができる」という原理も発見しました。彼が単語リストを1回音読した場合には、ほんの数分間しか覚えることができませんでした。しかし、何度も反復することにより、それらの単語を長期間記憶できることが判明しました。

英単語を覚える際にも同様の原則があてはまります。つまり、何度も反復することで記憶を強化することができるのです。ただ、ここで注意すべきは、反復回数に加えて、「記憶する」という行為をどのくらいの間隔で実施するかということです。

先ほど述べたように、1日経過すると約7割忘れてしまいます。そのことを考えると、新しい英単語を覚えた次の日には、それらの英単語を記憶する行為をもう一度実施することが重要です。

覚え方の実際的な方法

では実際に、英単語集の具体的な使い方を説明していきます。その前に、覚える際の概要やルールを説明します。

仮に英単語集に収録されている単語数が、1,500語だとします。そのうち、すでに知っている単語が300語あったとすると、覚えるべき単語数は1,200語です。この前提をもとに、以下の手順で覚えていきます。

・1,200語を100語ずつのカタマリに12等分する(時間に余裕のある場合、語彙を急激に増やしたい場合は、200語でも300語でも構いません)

・最初の1週間(1日目~7日目)で、100語のカタマリ(1番目の単語~100番目の単語)を覚える

※このとき、1日目に1番目~100番目、2日目に101番目~200番目といった具合に毎日新しい単語を覚えようとしないでください。

・2週目で、101番目~200番目の単語に取り掛かる(12週間で単語集を一巡することになる)

※このペースでは遅すぎる場合は、一巡したい日から逆算して1日に覚える単語数を設定してください。

例)留学先へ出発する日が2ヵ月先で、その日までに一巡したいとします。出発まで8週間あるため、1,200語を8で割ると、150語です。したがって、この場合は1つのカタマリを100語ではなく、150語に設定して覚えていきます。

・記憶を定着させるために一巡で止めない

※最初の目標は、まず一巡することですが、人間の脳は常に大量の情報を処理する必要があるため、不要な情報は忘れる仕組みになっています。そのため、記憶を強化するためには、少なくとも同じ単語集を7回は繰り返しましょう。

この7回繰り返すという根拠は、特にありません。ただ、以降で100語を7回繰り返して覚える方法を紹介しているため、1冊も7回繰り返すと認識したほうが単純でわかりやすいからです。

上記の概要・ルールを踏まえた上で、1日目~7日目にすべきことを具体的に説明します。

事前準備:「知らない単語」と「知っている単語」を分ける

CDもしくはダウンロードした音声ファイルを聞きながら、すでに「知っている単語」に印をつけていきます。「知っている単語」に印をつける理由は、回数を重ねるごとに「知っている単語」が増えていくことを実感するためです。

最初は事前準備であるため、「知らない単語」の意味を覚えようとする必要はありません。分けるだけの単純作業です。

単語集1冊分の音声を聞く時間は約2時間程度です。ただ、1日100語を目標とする場合は、1冊に収録されている単語数が1,500語であれば、100語のカタマリは、その15分の1なので、たったの8分を費やせばよい計算になります。

しかし、最初の1日だけは、2時間を費やしてすべての単語を「知っている単語」と「知らない単語」に分別するほうが全容を把握した上で取り組めるでしょう。

その作業が終わってから、「知らない単語」を100語ずつ覚えていきます。では、1日ごとに具体的に実施すべきことを見ていきましょう。

1日目:「知らない単語」の意味や例文を確認する

まず、事前準備で印をつけなかった「知らない単語」を最初のページから100語まで数えます。その後、それらの意味や例文を確認していきます。1日目はCDや音声を使う必要はありません。

2日目:意味を確認しながら、英単語をCDや音声ファイルの後についてリピートする

次の日に、英単語の意味を確認しながら、CDや音声の後につづいて単語をリピート発音します。ここでは、英単語の意味と音を関連付けます。

3日目:2日目と同じ作業を繰り返す

3日目は、記憶の定着を強化するために、2日目と同じ作業を繰り返します。

4日目:英単語集の本を見ないでCDや音声ファイルのみを聞き、発音をリピートする

今度は、単語集の本を見ることなく、音声のみを聞きながら、発音をリピートします。

5日目・6日目:4日目と同じ作業を繰り返す

音声のみを聞きながら、発音をリピートしていきます。ただ、単語のつづりが頭でイメージできない場合は、単語集の本を確認してください。

7日目:新しく覚えた単語を「知っている単語」として印する

1日目~6日目で学習した単語を見ながら、新しく覚えた単語を「知っている単語」として印をつけていきます。このとき、自分の進歩を確認するため、事前準備で入れた印とは異なる色や形状で印をつけると達成感が増すので良いです。

以上で1週目は終了です。

2週目は、次のカタマリである101~200語を覚えていきます。その後、3週目は201~300語に移ります。このように、一連の作業を繰り返して、単語集を一巡します。一巡にとどまらず、何度も実施して記憶を強化していきます。

同じ単語集を何度も繰り返し記憶していくことは、一見面倒に思えます。しかし、一巡目よりも二巡目、二巡目よりも三巡目のほうが速く単語を覚えていけるため、想像するよりも手間や時間がかかりません。

「単語集メソッド」で推奨しないこと

英単語を覚える際に、よく活用される3つの手法があります。しかし、それらの手法をこの「単語集メソッド」では推奨していません。具体的にその3つの手法とは、「単語を書き出すこと」「小さな単語カードを使うこと」「ANKIのようなスマホアプリやExcelといったソフトウェアを使うこと」です。これらを推奨しない理由は次の通りです。

・「単語を書き出すこと」を推奨しない理由

「単語集メソッド」では、英単語を何度も紙に書いて覚える方法は使いません。もちろん紙に書くという行動に記憶を強める作用もあるため、紙に書くことを否定はしません。

ただ、私の「単語集メソッド」で、敢えてその方法を述べていない理由は、次の3つです。

理由1.紙に書く作業があると、1日に100語以上という数をこなすことが困難になる

理由2.書く作業は、通勤・通学時間といった隙間時間に実践することが難しい

理由3.受験勉強ではないため、英単語を正確につづれることを重要視していない(英語の文章作成ソフトなどにはつづりのチェック機能があるため)

これらの理由を見てわかるとおり、単語を覚える作業を続けやすくすることが大切なのです。

・「単語カード」を使うことを推奨しない理由

「単語集メソッド」では、上記の写真のような小さな単語カードを使うことは推奨しません。

その理由は単純です。転記することに時間がかかる割には効果が低いためです。転記という大変な作業をしていることが「自分は勉強をしている」と錯覚してしまい、成果と結びつかない場合が少なくありません。

また、単語集を使用している理由の一つが、この転記作業を省略することでもあります。単語集自体が小さいサイズのものが多いため、どこにでも持ち運ぶことができます。また、自分で追加情報を書き込みたいのであれば、単語集に直接書けば良いでしょう。

・AnkiやExcelといった「スマホアプリやソフトウェアを使うこと」を推奨しない理由

英単語を覚えるためのスマホアプリやウェブサービスは、日々進化して、その数も着実に増えています。大変便利なツールが多い中、私はそれらのツールを使うことを推奨しません。その重大な理由は、英単語を覚えることに集中する環境を整えるためです。

「単語集メソッド」を実施する際には、スマホやパソコンには一切触れないように環境を整備するべきです。なぜなら、集中できない環境では、英単語を覚えることなど到底できないからです。

しかし、単語を覚えるためにスマホやパソコンを使う場合、必然的に他のアプリから通知が入ったり、インターネットで検索をしたりして集中力が途切れます。本来ならば、単語を記憶することに専念できたはずの時間が無駄になってしまいます。

以上のように、自分の語彙レベルに合ったメソッドを用いて、語学留学に最低限必要な語彙を身に付けてください。また、大学留学やインターンシップなど、語学留学以外の目的で留学される場合も、語彙を増やす方法は同じです。自分の目的に合った単語集を購入し、同じ単語を最低7回反復して覚えるだけです。

ここで主に紹介している「単語集メソッド」を使って、効率よく単語を覚えながら、「出現単語メソッド」でネイティブが使う自然な単語の用法を身に付けていきましょう。

英語を母国語とする人の語彙は2万語前後だといわれています。ここで紹介した語彙増強の2種類のメソッドを活用すれば、1万語以上もしくはネイティブレベルまで語彙力を高めることができるでしょう。